松下正晴(まつした まさはる)
定期講習講師(知識、事故例、法令)
皆さんが関わっている電気設備は、断路器や開閉器それと遮断器等を設置して電気回路が構成されていると思います。
それらの中で、遮断器(VCB)は過電流や短絡電流が流れたとき、保護継電器と連携してその回路を遮断し他の回路への波及事故を防止する重要な設備です。
しかし遮断器も定期的なメンテナンスをしなければ、動作不良や絶縁不良で電気設備や生産活動等に重大な影響を及ぼす事になります。
その1例として、私が体験した事例を紹介したいと思います。
お客様は高圧受電のホテルで、非常用の高圧発電機が設置されておりました。
ある日ホテルの設備担当者から、電力会社側から停電し数分後に復電したが非常用発電機から送電していた重要な回路だけ停電しているとの連絡を受けました。
急いで現場に行き電気室を確認すると、確かに電力会社側からの受電は一部確認したのですが、発電機からの非常回路のみ停電状態で発電機は停止していました。
発電機側の遮断器を確認すると、まだ入りの状態だったので遮断器本体の切ボタンを押し発電機側遮断器開放後、商用側の遮断器が投入するのを確認しました。
今回発電機側の遮断器に異状がなければ、電力会社側の受電確認→発電機側遮断器切→商用側遮断器入り→非常回路復電でした。
後日、発電機側遮断器を点検すると、遮断器機構部に塗られているグリスが酸化固着し機構部がスムーズに動作しづらい状態になっていました。
ホテルの担当者には、定期点検時に遮断器内の古いグリスの拭き取り・清掃と、メーカー指定のグリス塗布等を予定に入れるようお願いしました。
皆さんも電気設備の点検を実施する際は、遮断器の精密点検を定期的に実施することをお客様に提案しては如何でしょうか?